犬の行動学
攻撃行動について
攻撃性への対策をする前に
犬の問題行動〜前編〜では攻撃性がでる理由や人を攻撃する理由について解説しました。
それらに対する対策を考える前に次の3点を覚えていただければと思います。
・犬が攻撃している理由の多くは「不安」「恐怖」から生じるということ
・噛まれないための安全対策をとる(ハウスリード*1など)
・代替案を考える(床で食事をして噛むなら椅子に座って食事をするなど)
*1ハウスリード:家の中でもリードを装着して行動範囲を狭め興奮を抑制することができる。
対策について
「手を噛んでくる」ということを例にあげていくと
「手が近づく」→「嫌な思い出」→「怖い・興奮する」→「噛む」
という流れになっている事が多いため手を「嫌な思い出」→「落ち着くもの」という風に意識を変えて行くことが大切になります。
この時、噛むことにより嫌なことから逃れることが出来た場合には攻撃行動が強化されるため手を噛ませて遊ばせるなどは中止する方が良いです。
具体的には
・手に歯が当たったら遊びを止める
・手から食事を与えてみる(それでも噛んでくるときは危険なので中止する)
・手で激しく撫でる行為は中止する
自分も小さい頃に知らない大人に頭をガシガシ撫でられて嫌な思い出があります。本人は可愛がっているつもりでも相手にとっては不快に感じている可能性があるのです。
治療法について
今まで解説したような点に注意していてもなかなか改善してくれないということが多々あります。
その際には「薬物療法」と「行動療法」を加えていくことをオススメします。
薬物療法というと怖いイメージを持つ方もいるかと思いますが、怒りっぽい性格の子の中には脳内のセロトニンという幸せを感じるホルモンが枯渇していたり、受容体のバランスが崩れるなどしていることがあります。この状態で無理やり行動を修正しようとしても上手くいかないどころか人も動物も怪我をしたり関係性が更に悪化することがあります。
大切なのはお薬を使うことによって性格が治るわけではなく少し考える時間が増えるためこの間に行動修正を行うということを理解する点です。
どのようにトレーニングをすれば良いのかはしっかりとした技術をもったプロに相談することをオススメします。具体的には「JAHAしつけインストラクター」や「DBCA認定ドッグビヘイビアリスト」など専門的な知識をもった方に聞いてその子にあった行動療法を行うことが大事です。
インターネットで得た知識をそのまま適応しようとすると改善しないどころか間違った方法で更に悪化することもありますので注意が必要です。
まとめ
基本的に攻撃性が出る原因としては何らかの恐怖を感じているからと考えられます。
またその恐怖の閾値(耐えられるレベルのこと)は各々で個人差があります。そのため合わないやり方や更に恐怖を与えてしまうような方法では改善しないどころか更に症状を悪化させる可能性があります。
以前は体罰を与えて従わせたり、首輪を強く引きいわゆる「主従関係」のみを伝える方法が良いとされていた時代もありました。しかしこれらの方法は更に恐怖を与えるだけなので根本的な解決には決してなりえません。
動物達とより良い関係を築くためにもしっかりとした知識をもって「治療していく」という意識が大切となります。
今回は前編、後編に渡り「攻撃行動」についての記事を書かせていただきましたが環境の変化に伴い様々なトラブルがありえるかと思います。性格だからと諦める前に一度相談していただければと思います。
院長