関節炎に新しいタイプの痛み止め【ガリプラント】
今回の内容
・ガリプラントとは
・関節炎の原因について
・作用のメカニズム
・どんな症状に使用する?
・副作用や安全性について
・まとめ
ガリプラントとは?
今回紹介するガリプラント®はグラピプラントというお薬で今までの痛み止めとは異なるメカニズムにより効果を示すものになります。痛み止めを使用する際に気になる点としては長期使用に伴う胃腸炎などの副作用などがありますがこの原因としては痛みを抑える際に胃粘膜保護をする部分も一緒にブロックすることが原因と言われています。そのため痛みのシグナル部分のみを目的に制御することで副作用が軽減されるというものになります。
ガリプラントの作用機序(エランコHPより)
関節炎の原因
関節疾患の中で最も発生頻度が高いものが骨関節炎(Osteoarthritis:OA)と呼ばれるものです。これは人でよく言われる変形性関節症を指し、関節軟骨が変形し、その厚みが減ることにより周囲組織の損傷を引き起こす慢性疾患と定義されています。犬では4頭に1頭(25%)の割合で発生すると言われており原因として若い時期では
- 先天性疾患
- 骨関節の異形成や骨折
- 骨軟骨症など
歳を重ねていくと
- 肥満
- 加齢性
などがあります。特に肥満は膝に体重の6倍の負荷がかかるとされているため悪化を招く原因となります。(詳しくはこちら)
骨関節症の原因(エランコHPより)
適応症について
基本的に関節の痛みがある際に使用します。痛み止めには様々な種類があり各々特徴が異なります。そのため急性で強い疼痛の場合は即効性などを重視して選択し、症状が落ち着いてきたけれど慢性的な症状が残る際には今回のガリプラントを選択するという使い分けが重要と考えています。ガリプラントは作用機序の際にも触れましたが今までの痛み止め(COX阻害剤)などと比べ
- 胃腸粘膜への作用
- 腎臓・肝臓機能などへの作用
- 血小板凝固機能などへの作用
が少ないと言われているため長期的な使用の必要がある場合に検討しても良いかと考えています。
副作用や安全性について
副作用については通常の15倍もの量を9ヶ月間投与した際の安全性が確認されていることから安全性の高いお薬と考えられます。またガリプラントおよびプラセボの服用の両群ともに食欲不振や下痢、軟便などの症状が確認されたとのことがありますが多くが軽度がつ一過性で無治療で回復していることからお薬の副作用というよりも内服によるストレスが原因かと推測されます。
関節炎の判断
診察していると「うちの子が関節炎で痛いのか分からなかった」という事がよくあります。実際に年齢を重ねると歩くのが遅くなったり寝ている事が増えるため関節炎による影響なのかが分からないことがあります。その際にはリバプール大学が提唱している骨関節炎の評価シートにLOAD質問票というものがあります。(詳細はこちら)この質問表で総合の点を基準に以下に分類していきます。
- 軽度(0−10)
- 中等度(11−20)
- 重度(21−30)
- 著しく重度(31−52)
客観的に数字で反映されるため現在の症状を把握するのに適していると考えられます。(再診用はこちら)
まとめ
今回は新しい機序のお薬であるガリプラントというお薬を紹介してきました。上の記事でも触れましたが痛み止めは様々な種類があり1種類で全ての症状をカバーするというものではありません。そのため症状や状態に応じて使い分けることが大切と考えらえます。実際の使用感としては疼痛抑制効果はマイルドであるが長期的に使用する上では副作用などの点において安全性が高いお薬であると考えられます。実際に慢性的な関節炎で痛み止めを長期服用し胃腸障害を起こしていた子に対してお薬を変更したところ症状の軽減が認められています。痛み止めの長期服用に悩んでいる方は一度お気軽にご相談ください。
院長 中谷