犬の関節炎解説

関節治療にカルトロフェン!

関節炎にカルトロフェンベット®

犬の関節炎解説

今回の内容

  • 関節炎の症状について
  • 関節炎の原因とは?
  • カルトロフェンベットって?
  • 投与の間隔について
  • まとめ
  • 番外編

 

関節炎の症状について

脚が痛い

関節炎は骨や関節に痛みが生じる病気です。このため骨関節炎とも呼ばれます。

炎症が持続することにより骨や関節内に変形などが起こり不可逆的な変化(戻らない状態)により持続的な疼痛を示すようになります。次のような症状が1つでもあれば関節炎が存在する可能性があります。

  • 横になった体勢から起き上がりにくそうにする
  • 脚や身体を触ると嫌がる、または突然キャンと鳴く
  • 散歩を嫌がる、または歩くのを急に止めるようになる
  • 脚を引きずるような歩き方をする、または脚を挙げて歩く
  • 腰を揺らしながら歩く
  • 階段の上り下りを嫌がる

関節炎の症状について【住友ファーマアニマルヘルス株式会社より】

関節炎の原因とは?

犬の関節炎

関節炎の原因としては

  • 肥満
  • フローリングなどで脚をすべらす
  • 階段の昇り降り
  • 激しい運動・ジャンプ・クルクル回る
  • 犬種(骨格)上の特徴・特性

などがありますが特に最近では肥満が症状の発現・悪化に関与していると多くの報告があります。また炎症がある状態で安静にできないと悪化・進行してしまいます。

関節炎が起こると次の3つのメカニズムにより悪化が進行します。

  1. 関節液の低下
  2. 関節内の血流の低下
  3. タンパク分解酵素の活性化

①関節内の軟骨が損傷すると炎症が生じます。炎症は関節液(滑液)の粘稠度が低くし、質と機能が低下していきます。このことで軟骨が更に損傷しやすい状態になります

②また軟骨が損傷すると炎症により白血球が活性化され血液の凝固が促進されます。この事により小さな血管が詰まり骨に栄養が届かなくなります(凝固亢進による微小血管梗塞)栄養を失った骨は壊死し関節などの構造に変化が生じ損傷しやすい状態になります

③白血球が活性化していくと炎症を抑えるためにタンパク質の分解を促進していきます。白血球や滑膜細胞から分泌されたタンパク分解酵素により軟骨が分解され保護機能を失っていきます

軟骨が一度損傷を受け、そのままにしておくと①~③のような悪循環により関節炎が進行していきます。

関節炎の治療方法

関節炎の治療方法には大きく次の5つがあります。

  1. 疼痛管理
  2. 体重管理
  3. 栄養管理
  4. リハビリテーション
  5. 疾患修飾性治療薬

疼痛管理の主なものは痛み止めなどの内服薬があります。但し、中長期的に服用することにより胃腸炎などの副作用が生じるリスクがあります。関節炎は慢性疾患のため長期服用する傾向があるため最近では副作用を抑えたお薬も開発・販売されています【詳しくはこちら】また体重が増えると膝などの関節における負担は増大します。ヒトでは体重が1kg増えると歩く場合に3〜4倍、階段で6〜7倍の負荷がかかるとされています。【WAKUNAGA HP】北海道大学の報告でも犬における体重と疾患の相関関係があると報告されているため適正な体重に維持することは病気の予防に重要な役割を果たすと考えられています。またサプリメントなども日常の痛みを軽減するのに役立つものもあるため症状などに応じての使い分けが大切となってきます。【関節のサプリについてはこちら

カルトロフェンベット®とは?

カルトロフェン,週一回4回投与

カルトロフェンベット®は疾患修飾性治療薬に分類されるお薬となります。今までのお薬は症状を抑えるお薬で一般的に「症状改善薬」と言われていました。カルトロフェンベット®などは疾患それ自体を治療するお薬となり「疾患修飾性治療薬」といわれ、人ではアルツハイマーなどの治療薬が現在研究されています。

カルトロフェンベット®の成分はポリ硫酸ペントサンナトリウム(PPS)というものでブナの木から抽出されたものになります。オーストラリアでは犬や馬の関節炎の治療に動物薬として先行して発売されており良好な治療成績を残しています。人では抗血栓治療薬、間質性膀胱炎などで欧州や米国で認可・使用されており現在は白血病やムコ多糖症の治療などへの応用が期待されています。

カルトロフェンベット®は主に次の4つの機能があり、それらにより関節内の炎症を改善するとされています

  • 軟骨細胞を刺激し、軟骨の素(プロテオグリカン)の産生を促進【軟骨の生成
  • プロテオグリカンの成分を分解する酵素を阻害【軟骨破壊の防止
  • 滑膜細胞を刺激しヒアルロン酸の生合成を促進【軟骨の保護
  • 関節部位の血行を改善【炎症の改善

これらの機能は関節炎の原因でも触れたような悪化のメカニズムそのものを抑えてくれるため根本的な治療が期待できるというものです。

投与方法

1週間に1回の計4回投与を1クールとします。

関節は一度変形してしまうと基本的には元に戻らないため、その後も炎症が起こらない様にしばらくの間は10〜14日などの間隔で投与をオススメしています。安定してくると1ヶ月毎の投与でも痛みが緩和されている子もいますので状態を診ながら投与間隔を相談していきます。

まとめ

骨関節炎は悪化すると変形性関節症となり、完治することが難しくなります

そのため症状を初期の段階で予防・治療することが大切になってきます。

今回はその一つの治療方法であるカルトロフェンベット®を紹介させていただきました。このお薬は炎症などを抑えるだけでなく関節炎のメカニズムそのものを落ち着かせてくれる機能が期待されるものです。関節炎がすぐに無くなる訳ではないため即効性には欠けますが痛み止めなどを併用しながら経過を見ることで症状の安定が期待されます。

カルトロフェンベット®による治療をご希望の方は当院までお気軽にご相談ください。

文責:中谷

〜番外編〜

血液ドロドロ

一般的に関節炎の治療に使用されているカルトロフェンですが一例報告となるもののシェルティーのクッシング症候群に伴う血栓の閉塞などにも効果が認められました。

またシュナウザーの多汗症に対しての効果が報告されています。【獣医皮膚科学会】

また猫の変形性関節炎に対する効果も2021年に竹内先生の発表がありました。【MVM No.195】

当院では以下の症状に対してカルトロフェンベット®による効果が認められました。

  • 椎間板ヘルニア
  • 多汗症
  • 静脈血栓塞栓症
  • 気管虚脱
  • 弛緩性の尿失禁
  • 高脂血症
  • 脂漏症(乾性・湿性)
  • 猫の変形性関節炎、股関節炎

これらの治療を希望される方はお気軽にご相談ください。

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