犬と猫のてんかん治療最前線|薬・CBD・食事療法まで解説
てんかんは犬や猫で比較的よくみられる神経疾患です。
近年では従来の抗てんかん薬だけでなく、CBD(カンナビジオール)や食事療法、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)に着目した研究も進んでいます。
今回は、最新の知見をもとに犬・猫のてんかん治療について分かりやすく解説します。
てんかんとは
てんかんとは脳の神経細胞が異常に興奮することで発作を繰り返す病気です。
症状として
- 意識消失
- 全身のけいれん
- よだれ
- 突然倒れる
- 顔面の痙攣
- ぼーっとする
などが認められます。発作の頻度や重症度によって治療方針が決定されます。
現在のてんかん治療の中心は抗てんかん薬(ASM)
現在も治療の基本は抗てんかん薬です。
犬では主に
- ゾニサミド(コンセーブ)
- フェノバルビタール
- レベチラセタム(イーケプラ)
- 臭化カリウム
などが使用されています。
ゾニサミド(ZNS)
日本で開発された抗てんかん薬です。国内では非常によく使用されており、コンセーブ®︎と呼ばれていることもあります。
- 発作頻度の減少
- 忍容性の高さ
- 長期管理のしやすさ
が特徴です。近年の研究では発作抑制率が70%以上と報告されており、第一選択薬として使用されることも少なくありません。一方で
- 肝酵素上昇
- 運動失調
- 食欲低下
などがみられることがあります。
フェノバルビタール(PB)
世界的に最もエビデンスが豊富な抗てんかん薬です。現在でも犬のてんかん治療の第一選択薬として位置付けられており、海外ではこちらが使用されているケースが多い印象です。
メリット
- 高い発作抑制効果
- 長い使用実績
注意点
- 肝臓への負担
- 鎮静作用
- 多飲多尿
定期的な血液検査が重要になります。
レベチラセタム(LEV
比較的新しい抗てんかん薬です。特徴として
- 副作用が少ない
- 他の薬との併用がしやすい
- 急性発作時にも利用できる
という利点があります。単独使用よりも補助薬として活用されることが多い薬剤です。
臭化カリウム(KBr)
特に犬で使用されることが多い薬剤です。
フェノバルビタール単独で十分な効果が得られない場合の追加治療として利用されます。
ただし、
- 後肢のふらつき
- 鎮静
- 消化器症状
が認められることがあります。また猫では重度の呼吸器症状を起こす可能性があるため、一般的には推奨されません。
CBD(カンナビジオール)はてんかんに効果がある?
近年注目されているのがCBDです。
CBDは大麻草由来の成分ですが、精神作用を持つTHCとは異なり「ハイになる成分」ではありません。
人医療では難治性てんかんに対して
- ドラベ症候群
- レノックス・ガストー症候群
などで使用されています。
犬の研究結果
現在までの研究では
- 発作回数が減少する可能性
- 安全性は比較的高い
ことが報告されています。
しかし、
- 製剤ごとの差が大きい
- 用量が統一されていない
- 長期安全性が不明
という課題があります。現時点では「標準治療の代わり」ではなく補助療法の位置付け
と考えるのが適切です。
食事療法はてんかんに役立つ?
近年、脳と腸の関係である
脳腸相関(Brain-Gut Axis)が注目されています。脳と腸は神経やホルモンを介して密接につながっており、腸内環境が脳機能へ影響することが分かってきています。
MCTオイルとケトン食
人医療ではケトン食療法が難治性てんかんに使用されています。犬では
- MCTオイル
- MCT配合療法食
に関する研究が進んでいます。研究では
- 発作頻度の低下
- 認知機能の改善
- QOL向上
が報告されています。
腸内細菌叢(マイクロバイオーム)との関係
難治性てんかんでは腸内細菌叢の異常が関与する可能性が指摘されています。最近では
- プロバイオティクス
- プレバイオティクス
- 糞便微生物移植(FMT)
なども研究対象となっています。まだ研究段階ですが、将来的な新しい治療選択肢として期待されています。
当院でのてんかん診療
てんかんの治療は
- 発作の頻度
- 発作の重症度
- MRI検査の必要性
- 年齢
- 基礎疾患の有無
によって最適な治療法が異なります。
当院では
- 血液検査によるモニタリング
- 抗てんかん薬の調整
- 食事管理のご提案(特に腸内環境の安定化)
- 必要に応じた二次診療施設との連携
を行いながら、発作コントロールと生活の質(QOL)の向上を目指しています。
まとめ
犬や猫のてんかん治療は近年大きく進歩しています。
- ゾニサミド
- フェノバルビタール
- レベチラセタム
- 臭化カリウム
といった従来薬に加え、
- CBD
- MCT食
- 腸内細菌叢へのアプローチ
など新しい研究も進んでいます。
ただし現時点で最も重要なのは、適切な診断と抗てんかん薬による治療です。
発作がみられる場合は自己判断せず、早めに獣医師へご相談ください。


