猫のアトピー性皮膚炎
今回の内容
- 猫のアトピー性皮膚炎とは?
- 鑑別疾患について(アレルギーかと思ったら、、、)
- 診断方法について
- 治療方法について
- 予防はできる?
- まとめ
猫のアトピー性皮膚炎とは?
環境中のハウスダストや食べ物、ノミなどの寄生虫により引き起こされる皮膚の病気の事を言います。一般的に痒みがあり、引っ掻いたり過剰に舐めるなどの行為によって脱毛や皮膚の炎症を引き起こします。多い症状として
- 耳の周りに赤みがある
- 剥げている(特に後ろ足の踵の部分)
- お腹を舐めすぎて毛がない OR 傷がある
- 膨らんだ傷があり、ぐちゅぐちゅしている
- 痒みがある
などがあります。しかしこれらの症状はアレルギーと気づかれていないことがあり様子を見られているケースが多いことがあります。実はこういった症状を呈する場合、その背景に猫アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが隠れていることがあります。
鑑別疾患について(アレルギーかと思ったら、、、)
痒い猫の鑑別疾患として若齢であれば
- ノミ・ダニなどの外部寄生虫
- アレルギー
- 皮膚糸状菌症(いわゆるカビ)
高齢であれば上記に加えて
- 皮膚のリンパ腫(上皮向性リンパ腫)
- 落葉状天疱瘡
- ボーウェン病
- 腫瘍随伴症候群
などがあります。また意外と多い鑑別疾患として膀胱炎や便秘(巨大結腸症など)がある場合があります。そのため【痒みがある=アトピー性皮膚炎】とは限らないケースがあり治療の前に診断をつけることが重要になります。
診断方法について
実際の診断の流れとしては
- 現在の飼育環境、食事内容、痒み等について調べる(問診、触診、視診)
- ノミ、ダニの有無を確認(外部寄生虫の除外)
- 真菌(カビ)やその他感染症の除外真菌、細菌感染の除外)
- 食べたことのない食事に切り替える、オヤツなどの中止(除去食試験)
- 血液検査にてアレルギー(IgE)反応がないかを確認(血清中抗原特異的IgE検査)
- 特定のアレルゲンを注射して反応がないかの確認(皮内反応試験)
実際の現場においてはアレルギー検査やアレルゲンの投与は行わないケースが多いのが現状です。診察では痒みのある部分だけでなく体全体を診ていき鑑別疾患のような病気が隠れていないかを調べます。痒みがなく脱毛だけ受診したケースで実は胸腺腫という腫瘍があったなどという事もあるため必要に応じてレントゲン検査やエコー検査などを実施することもあります。
治療方法について
お薬を使った治療法として
- ステロイド製剤(プレドニゾロン)
- シクロスポリン(アトピカ®)
- オクラシチニブ(アポキル®)
等があります。ステロイドは速攻性がある一方で長期使用により副作用として糖尿病などが報告されており症状に応じて漸減していくことが重要となります。ただし減量や休薬によりすぐに再発してしまうことがあるため慎重に経過を見ていく必要があります。近年犬において副作用が比較的少ないお薬としてアポキルというお薬が発売されました。このお薬は犬では効果の報告が多数見られますが猫のアトピー性皮膚炎まだ報告が少なく、また犬に比べてやや用量が多いことが難点となります。今後新たな報告があれば使用を検討するお薬となります。これらの特徴を踏まえ、当院ではシクロスポリン製剤を第一選択としてお勧めするケースが多いのが現状です。但しこのお薬も全く副作用がない訳ではなく免疫機能を抑制することで腫瘍や猫エイズなどの基礎疾患がある場合は慎重に使用する必要があります。また症状の改善まで時間がかかることがある(2〜4週間)ので痒みの初期はステロイドを使用するなどお薬の組み合わせが大切となります。
予防はできる?
猫アトピー性皮膚炎において最も大切なことが原因の追求と除去になります。お薬を服用していてもアレルギー物質(アレルゲン)を摂取していれば改善は難しくなります。症状に応じて対策は異なりますが
- オヤツを止める(家族にも伝えることが重要)
- ベット下などに入らないようにする
- 食事をコロコロ変更しない(原因が多岐に渡ってしまうため)
んどがあります。最近の報告では食物アレルギーの原因として青魚系の食事が多い傾向があることが知られています。そのため缶詰を中止したりちゅーるなどのオヤツを止めると痒みの症状が治ったという事があります。
まとめ
今回は猫のアレルギー性皮膚炎について全般的な話をしてきました。アレルギーが原因かと思ったら実は違う病気だった、またはその逆も然りです。犬とは症状などが異なることがあるためそのまま放置されているケースも散見されます。まずはお家での様子や皮膚の状態をチェックしていただき、何らかのトラブルが見つかったら早めの相談をお勧めします。
院長 中谷