子宮蓄膿症について
今回の内容
- 子宮蓄膿症とは
- 子宮蓄膿症の原因
- 治療法について
- 予防について
- まとめ
子宮蓄膿症とは

子宮内で細菌感染が起こることによって子宮に膿が溜まる病気です。
症状としてはよく水を飲む(尿量が多い)、下り物が多い、食欲低下、熱っぽいなどが一般的に言われていますが症状があまり出ない子もいます。
子宮蓄膿症には膿が陰部から出てくる開放性と詰まって出てこない閉鎖性があります。いずれも破裂すると細菌がお腹の中に広がり細菌性腹膜炎を起こし非常に亡くなる危険性が高い病気です。
子宮蓄膿症の原因
犬の女の子では年に2~3回程度の発情があります。一般にヒートや生理などと言われますが、発情後はおよそ2カ月ほど黄体期という時期になります。この時期は細菌感染を起こしやすくなり、下痢や陰部を舐めるなどにより大腸菌などが感染し子宮に膿が溜まっていきます。
8歳以上の高齢で発症しやすいと言われていますが3~4歳の若齢での発症もあるため発情後1~3か月で水をよく飲みだしたなどがあれば注意が必要です。
一方、猫においては子宮蓄膿症自体が少ないと言われています。これは交尾排卵のため黄体期自体があまりないことが理由とされています。しかし避妊をしていない中年齢程度の猫においてエコー検査を実施すると子宮内部に液体が溜まっていることがしばしば認められるため症状がなくても潜在的には発症している可能性があります。
治療法について

基本的に外科手術にて子宮と卵巣を摘出します。内科治療もありますが治癒までに時間がかかることや再発が多いという点から一般的に外科治療が優先されます。来院時に状態が悪い場合(破裂は除く)には点滴や抗生剤にて状態を安定させてから手術を行うこともあります。
2024年追記
本邦でも子宮蓄膿症の注射薬であるアグレプリストンが発売されました。注射薬は万能という訳ではありませんが、治療の選択肢の一つが増えることにより今までは助けることができなかった命が救われる可能性もあります。詳しい内容に関しては獣医師にご相談ください。(アグレプリストンの記事はこちら)
予防について

子宮蓄膿症は避妊手術を行うことで予防することができます。また初回発情前に手術をすることによって高い割合で乳腺腫瘍(いわゆる乳がん)を予防することもできます。妊娠を望まれない場合は早めの手術を検討していただけると良いかと思います。
まとめ
子宮蓄膿症は避妊手術を行うことで予防できる病気です。次のような症状があれば早めの受診をお願いします。
- 水をよく飲む
- おしっこが多い
- 熱っぽい
- 食欲が落ちた
- 下り物が多い、または膿っぽいものが陰部に付く
子宮蓄膿症の発生機序について(2024年追記)
子宮蓄膿症は上記にもあるように発情後に起こりやすいことが知られています。この原因としては黄体ホルモン(以下プロジェステロン)が関与しています。新しい治療薬であるアグレプリストンがなぜ子宮蓄膿症に効果があるのかを知ることができるため重要な考えとなります。
- 妊娠に関わらず発情出血後はプロジェステロンの分泌が2ヶ月程継続する
- ホルモンの影響を受けて子宮の内膜は肥厚増殖する
- 肥厚した内膜は細菌感染が起こりやすくなる(凸凹の中にはまっていくイメージ)
- 細菌感染による炎症で膿(好中球)が増加
- 閉塞性の場合、細菌などによる中毒症状が出やすくなる
- 食欲不振や発熱などの症状が顕在化する
アグレプリストンはプロジェステロンよりも親和性が高いため生体内のプロジェステロン濃度を低下させ人工的な流産を促します。これにより体外へ排膿を促すというものとなります。
以下に実際の子宮蓄膿症の画像があります。
人によってはショッキングな可能性もありますのでご理解の上御覧ください。
子宮のエコー写真

こちらは膿が溜まった子宮のエコー写真になります。一般的に子宮内には液体が溜まっていませんがこちらの写真では2.5㎝も膿が溜まり大きくなっています。実際に摘出したものは下の写真で800g以上ありました。
実際の子宮蓄膿症

手術では子宮がねじ回って破裂寸前でした。今回のケースでは破裂前に受診していただき事なきを得ましたが緊急性の高い病気だけに予防が大切です。