【内視鏡検査検査】(腫瘍編)
今回の流れ
- 胃の検査をするまで
- 胃の内視鏡
- 犬のリンパ腫
胃の検査をするまで
今回は定期検査で甲状腺ホルモンが低下しているため追加のエコー検査を実施した例となります。健康診断にて甲状腺ホルモンの低下が判明し追加の検査(fT4、TSH、エコー検査)において甲状腺機能低下症と診断されていたためチラージンという甲状腺ホルモン薬を服用していました。しかし内服を継続しているにも関わらずホルモン値が低くまた炎症のマーカーの軽度上昇が認められました。
- 甲状腺機能低下症は既往歴としてある
- 内服していても甲状腺ホルモンが低値
- 体重減少が認められる
エコー検査では胃の粘膜が非常に腫れており一般的に上限が6mm程度のところ12mmもあったため早めの内視鏡検査の実施を提案させていただきました。
胃の内視鏡について
胃の内視鏡では表面を詳細に観察することができます。そのため構造上異常が疑われる部分を生検鉗子という特殊な器具を使用して細胞を採ってきます。今回は事前情報としてエコー検査で胃の噴門部〜胃体部において粘膜の肥厚が認められていたためその部分を中心に観察していきました。
【写真1】
- 内視鏡において粘膜がボコボコに隆起していることがわかります
- 本来胃の粘膜はツルツルで均一な構造をとっています。
【写真2】
- 胃の入り口(噴門部)においても凸凹の構造が認められます
【写真3】
- 慢性的に胃炎を起こしており表面がびらん状態となっています
【写真4】
- 慢性炎症の影響かリンパ管という構造が腫れており虫がいるような白い点々が認められます。(リンパ管拡張)
胃のリンパ腫について
“犬と猫のいずれにおいても、消化管腫瘍の中でもっとも発生頻度の高いものはリンパ腫である。(VETERINARY ONCOLOGY vol.8 No.3 2021 P62)“
と言われており消化管に限局して発生するものを胃腸間リンパ腫と呼ばれます。腫瘍の形によって大細胞性、小細胞性に分かれそれぞれ予後や治療方法が異なります。このため腫瘍が見つかったもしくは疑わしい際にはまずどんな腫瘍であるかを病理検査に提出して診断をくだすことが重要です。
今回の症例では小細胞性消化器型リンパ腫と考えられ報告ではステロイド単独の治療と比べ生存期間が有意に延長したことが報告されています。(コルチコステロイド単独:127日、アルキル化薬併用:628日)
まとめ
今回は定期的な健康診断において早期に腫瘍が発見された例となります。一般的に食事や運動量の変化がないにも係わらず体重が1割程度減少している場合には何らかの病気を疑います。特に中年齢(5、6歳)以上の子の場合は腫瘍の可能性も考えて早めの検査をお勧めします。また元気な時ほど健康診断にて現在の状態を確認していくことが早期発見・治療に重要ですので是非、定期的に受診していきましょう!