うさぎの子宮蓄膿症について

今回の内容
- うさぎの子宮蓄膿症とは
- 症状について
- 予防するためには
- 従来の治療法
- アグレプリストンを使用した治療法
うさぎの子宮蓄膿症とは
近年予防医学やうさぎにおける医学の発展によりうさぎさんの平均寿命が伸びてきています。一方で避妊手術をしていない4-5歳以降の雌のうさぎでは子宮関連の病気が増えてきます。子宮蓄膿症は子宮に膿が溜まって血尿などを呈し悪化すると全身の血液に細菌が増殖して死亡することがある病気です。高齢になるにつれ子宮内膜炎や子宮水腫などの炎症が慢性化することで子宮内に細菌が増殖して発症することが考えられています。
子宮蓄膿症の症状について

- 血尿
- 元気消失
- (重症化すると)呼吸困難、敗血症
最も多く認められる症状は血尿です。但しうさぎは普段から濃い尿をするため違いがわかりづらく発見が遅れてしまうこともあります。血尿かどうかが判断できない時はおしっこやシートを病院に持参して確認してもらうことが大切です。また子宮の病気では突然大量の血尿が出ることがあるため普段よりも量が多いなどの変化があれば早めの受診をお勧めします。
予防するためには
一番の予防方法は子宮の疾患になる前に避妊手術をすることになります。3−4歳以降に多く発生していることからそれまでの年齢で元気があるうちに予防的な手術をすることが大切となります。(当院では2歳までの発生も認められることがありました)肥満やその他の疾患がある場合は麻酔のリスクが増加するため普段から栄養状態などをしっかり観察することも大切です。避妊手術をしない場合は血尿の状態や乳腺が張っていないかなどを自宅や病院において定期的に確認することが大切です。
従来の治療法
血尿の症状は止血剤や抗生剤を使用することによって一過性に改善することがあります。但し根本的な治療ではなく再発を起こす可能性が非常に高いため状態が落ち着いたら早めに避妊手術の実施をお勧めします。また血尿の原因を膀胱炎と勘違いしていると重症化してから気づくことがあるため、エコー検査などで膀胱及び子宮の状態を確認することが重要です。この場合子宮の状態を確認することで症状の原因が腫瘍なのか膿が溜まっているかを鑑別できることもあります(全てが判るわけではありません)
アグレプリストンを使用した治療法

こちらの論文ではうさぎさんに対してアグレプリストンというお薬を使用して人工的に中絶を促したというものです。これによると妊娠6、7日目に本薬剤を10mg/kgで投与した結果24時間で100%の中絶が得られました。9日目には着床部位の退縮が認められ、また母体への影響は認められなかったとのことです。この薬剤は出産のメカニズムに類似した過程を経て子宮内に溜まった膿を排泄するというものです。問題点としては次の発情の際には再発のリスクがあるというものがあります。
(原文引用)Aglepristone (10 mg/kg SC) injected 24 hours apart on Days 6 and 7 after mating prevented implantation in 100% of does (n = 13) [38]. In the uterus, implantation sites began to regress from Day 9 and were no longer detectable on Day 11 after mating. Vaginal bleeding and discharge were absent, and body temperature remained unchanged. No other adverse effects were observed in the treated females
アグレプリストンのプロトコール

投与は初日と翌日10mg/kgで皮下注射します。本論文では実際の子宮蓄膿症に対して使用したものではなく中絶に対しての投与である点に注意が必要ですが、犬での報告では同様の試験で子宮蓄膿症に対しても反応があるため効果は期待できるものと考えられます。
まとめ
今回はうさぎの子宮蓄膿症及び新しい治療法について解説してきました。
基本的には子宮の病気になる前に避妊手術で予防することが重要となります。近年では飼育環境が整っていることでうさぎさんの寿命も伸びているためしっかりと予防や日々の観察をして元気な状態を維持できるようにしていきましょう。