猫の形質細胞性足底皮膚炎
今日の内容
- 猫の形質細胞性足底皮膚炎とは
- 鑑別疾患について
- 診断の方法
- 治療法について
猫の形質細胞性足底皮膚炎とは
今回は猫の肉球にできる病気について解説していきます。形質細胞性足底皮膚炎は教科書的には猫における発生は稀とのことですが最近立て続けに2例の症例に出会うことがあったためまとめてみました。この病気は足裏の肉球に見られる形質細胞という白血球の一部が増える病気です。グルココルチコイドというステロイドに反応が良好なため何らかの免疫が関与しているのではないかと考えられていますが発生機序はまだ分かっていません。
本症例においては「突然びっこを引いて歩いていると思ったら肉球がパンパンに腫れていた」とのことでいつからかは不明との事でした。触診では波動感(ぷにぷにとした)がありエコーでは液状化?しているような像が認められました。【実際のエコー画像】腫れた肉球は潰瘍や出血しやすくなるため痛みが出て跛行(びっこ)が見られるようになるとのことです。
実際の形質細胞性足底皮膚炎
鑑別疾患について
よく猫の肉球で見られるものとしては多頭飼育や外出をする子で他の猫ちゃんに噛まれたor引っ掻かれて腫れてしまったものです。この際には膿の中に好中球という別の白血球が出てくるため感染症と判断することが出来ます。また外出をする子で異物が肉球に刺さってしまったり夏のアスファルトで火傷してしまった子に遭遇することもあります。
また夏に蚊に刺されて腫れている時も同様の所見が認められることがあります。
診断方法について
基本的にはアレルギー性の症状や異物などの感染症を除外した上で診断をします。今回の場合は針生検(Fine Needle Aspiration)において形質細胞が多数確認されたため腫瘍との鑑別のため細胞診に提出し診断されました。これで診断されない場合は病変部分の切除やパンチ生検といった方法で病理検査に提出し診断することもあります。
治療法について
無症状の場合は治療を行わなくても自然に治癒することがあります。これは免疫原性の腫瘤であるため恒常的な免疫刺激がなければ退縮する可能性があると考えられているからです。逆に炎症などで恒常的な刺激がある状態であれば積極的な治療が必要となります。外出をしたり舐めたりする子では常に刺激があると考えて傷口の保護(カラーの装着)治療を開始することをお勧めします。その他の治療法としては
- 基礎疾患であるアレルギーなどを特定して治療
- 二次性膿皮症の治療
- 疼痛に対しての全身性グルココルチコイドやシクロスポリン製剤の服用
- ドキシサイクリンの服用(免疫調整作用があると考えられている。リンクはマウスのもの)
- 外科的処置(潰瘍部分の切除)
などがあり各々の症状に応じた治療が必要となります。
まとめ
今回は猫の肉球にできる病気について解説しました。この病気は何らかの免疫が関与すると考えられているため猫エイズ(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)などとの関連も考えられますが現在のところ証明はされていません。実際自分が担当した子では外出はなくそれらの感染も認められなかったことから必ずしも原因とはならないものと考えられます。
いずれにしても潰瘍や痛みなどがあれば肉球を確認して早めの治療を受けて頂ければと思います。
院長 中谷
参考書籍
- 小動物の皮膚病カラーアトラスー犬・猫・エキゾチックアニマルー 岩崎利郎 監訳 interzoo