巨大な異物を摘出せよ!
今回の流れ

- 嘔吐が続くときは、、、
- 今回の症例紹介
- まとめ
嘔吐とは

嘔吐(おうと)とは胃の中や上部消化管と呼ばれる部分に溜まった内容物を吐き戻すことを指します。食べて形がある状態のフードを吐いたりすることがありますがこれは吐出と呼びます。嘔吐の鑑別としては消化管の機能障害、感染症、代謝性疾患、中毒、寄生虫、異物、腫瘍など様々あります。乗り物に酔ってしまったり、過度な興奮や空腹が続くことで嘔吐が生じることもあります。そのため「吐く」という症状だけでは何が原因であるかを特定出来ないことが多いためエコー検査やレントゲン検査、内視鏡検査など様々な検査を駆使して原因を追求していきます。特に慢性的(症状が1週間以上続く)な嘔吐や急性で激しく症状がある場合は早めの検査が重要です。
異物による嘔吐

今回紹介する子は慢性的な嘔吐がありエコー検査では胃の粘膜が重度に腫れていたというものです。胃内に食事などが含まれる場合は構造が似ていれば異物か食事かを判断するのは困難になります。(棒やボールなどは構造がくっきりするのでエコー検査だけでも判断がつく場合があります。)今回もエコー検査だけでは胃の構造異常だけでレントゲン検査にて何か大きな構造物が判断しました。(矢印の部分が胃に当たります)
実際の内視鏡動画(術中音声が大きいため消音での再生をお勧めします)
ここではレントゲン検査において確認された異物について手術前に内視鏡検査を実施して他に見逃しがないかを確認しています。また内容物によっては術中に腹部に漏れ出す可能性もあるため安全上の理由からも内視鏡検査の事前実施がお勧めです。
今回は内視鏡において液体や鋭利なものが存在せず十二指腸以降の閉塞などがない事を確認した上で胃切開術による摘出を行いました。
手術での摘出
実際の手術の画像がありますので苦手な方はお控えください

手術中の画像になります。助手の方に胃を牽引してもらいながら胃の中の内容物が外に漏れ出ないように慎重に進めていきます。また胃の周囲にはガーゼを敷き詰めこれも胃内容物により腹膜炎などが起こらないように注意しています。
縫合後の胃の状態
胃の中にあった異物

胃の中には毛や絨毯の繊維、ゴム製のキャップ、人工芝の根本?、アルミホイル、タコ糸、その他もろもろが絡まって存在していました。あまりにも巨大な塊であったため小さい切開創からは取り出せず大きめに切って摘出しています。実際術後に重さを測定すると異物だけで300gもありました。この子は異物が存在しているにも関わらず元気に前日まで食事を摂っていたとのことですが、最近血混じりの嘔吐が認められるようになったとのことです。
まとめ
今回は胃内の異物の除去について解説しました。
胃の中から出てきたものは3年ほど前に無くなったものも含まれていたそうです。まるでタイムカプセルみたいですが、逆にいうとその間ずっと炎症を引き起こしていたと考えるとゾッとします、、、
慢性的に吐いている、嘔吐物に血が混じるなどの症状があれば一度エコーやレントゲン検査を受けて早期発見に努めてあげてください。
院長 中谷
参考文献
- 見てわかる小動物の外科手技 II 消化管 Eduward press